第10日目

 靴磨きセットで、靴の汚れを落とす。食事は日本食。紙に包んで電子レンジで温めたご飯を食べる。実に美味しい。歯磨きセットで食後に歯を研く。トイレで口をすすぐ。

 背を倒してぐーんと足を延ばす。大分歩き回ったので足が少し大きくなっている。シベリア上空あたりで夜と云う勘定だが、空が黒ずんだだけで真っ暗には成らない。暫くすると今度は窓から強い朝日が差し込む。夜に成らずに夜が明けた。

 飛行時間15時間。乗り継ぎを含めて17時間ほど。来たときと反対で今度は東向きだから、時刻が8時間程の時刻に短縮される。8時間の中に、朝昼夜朝と矢継ぎ早に過ぎ明くる日の午前中に成田空港に到着。

 東回りで帰ると、来た時に一日得をしたのが帰りに取り返えされて仕舞うけど、このまま西回りで日本に帰ったらどうなるんだ。寿命が一日得をするのか??

 そんな事は許されません。日付変更線で取り返されて仕舞います!!



帰宅後

 スペインが余り暑かったので、現地で買ったポロシャツを着ていた。帰宅後に沢山溜まった衣類の洗濯をした。おとうさーん!この間買ったばかりのポロシャツもうほつれちゃったよ!不良品だね!袖を通して仕舞ったし、遠くて返品に行けないよ!

 矢張り日本が良いなあ!と云うのが率直な感想である。何がそんなに好いかって?其れは緑が多いと云う事だね!日本にいると自然の恵みに感謝したこともないが、荒廃した土地に立つと日本の恵まれた大地が本当に恋しくなる。

 日本とほぼ同じ緯度にあり同じように太陽の恵みを受けているのに、自然を粗末にし慈愛を持たなかったばかりに、数千年来運動場のようなカンカン照りの、虫も小動物も住めない死んだ土地にして仕舞った。

 この國は日本と比べて険しい山岳もない穏やかな地形なのだから、宗教家も政治家も国民も自分の足下を見つめることを真剣に考えていたのなら!!もし緑豊かな森林があったのなら!多くの生命が慈しみ育つ事が出来たでしょうに!

 この地球は人間の専有物ではないのです。人は多くの生命の中のたった一つなのです。この世に生きとし活けるものみんなの地球を、もっともっと大切にしようではありませんか!今の日本の森や林は私たちの先祖が子孫のために遺してくれたものです。受け継いだ遺産をもっと増やして子孫のために遺そうではありませんか。

 

 緑の草原と森林

 飛行機の上から見たスペインの土地は一面緑の丘陵畑地と書きながら、次の筆で自然環境が極めて悪いと書いた事に一言付け加えておこう。嘗てニユージーランドへ旅行したことがある。旅行前に色々な本を讀んだ。どの本にも緑に覆われた大地と説明されていた。行って見て驚いた。確かに緑に覆われた大地では有ったが、其れは緑色をした丸坊主の大地であった。

 帰郷後の懇談会の席上、みな声を揃えて自然豊かな緑に覆われた大地であったと賛美した。私は其の余りの無知さ加減に呆れて開いた口が塞がらず、反論する気にも成れなかった。

 彼の地は植民地政策によって総ての森林は切り倒され丸坊主にされたのだ。そこに牧草を作付けした。これで確かに見た目は緑色をした土地になった。だが其れはあくまで「緑色をした」と云うだけである。草地は根がびっしりと張り詰め、雨が降っても地中に浸透せずに表面を一気に流れ去る。

 だから雨が降ると河川が大水となる。水が沁みて居ないから井戸を掘っても豊富な水量は得られない。地中に水が無く固まっているので生物が住めない。生物が住めなければ肥料分の蓄積が出来ないから、農作物の収量は上がらない。

 草地と森林の大きな違いは、地中と地上を含めた単位面積当たりの植物総量の違いがある。恐らく其の数量は森林の数百分の一しか無いだろう。だから草地は幾ら広大でも森林に比べて、保水量が極めて小さく、またこの様な悪い環境では、地中や地上の多くの生命の生存が制限されることである。

 又気象にも大きな違いがある。草地は水分の蒸散量が少なく、森林は植物総量に応じて蒸散が多く、気化熱を多く奪うので周囲の気温を下げる。これは森林のない都会では夏期クーラーを必要とするのに、森林の多い農村地帯ではクーラーを必要としない事でも分かる。更に森林のない地上は熱せられて、上昇気流を作り雨雲の発生を阻害する。

 だから草地や果樹園が幾ら広大でも、緑豊かな土地とは、云えないのである。

 

追記

 多くの紀行文は、賛美の羅列で有るが、誉めることは誰だって書ける。相違点を書くには、此方も相手も双方知らねばならない。

 トイレのタイル張りが下手だ!と書いたが、こんな些細な事でも、日本の職人ならこれ位が普通でこれ以下なら下手と云う、職人の目が無ければならない。

 これは日本人でも一般の人には判らない事で、関係者だからこそ判る事である。(詳細はプロフイルを参照して下さい)宗教のあれこれに就いて書いたが、創設者は其れなりの人かも知れぬが、引き継いだ者はご本人ではないし、ましてや現在の執行者は尚更と云う事と、物事には必ず表と裏がある事を知れば、誰だって直ぐに判ることである。

 植林のことを何故しつこく書いたかと云えば、みんなが何気なく吸っている空気、酸素は無尽蔵に有るのではないのです。植物に依って時々刻々と造り出されて居るのです。

 酸素が無かったら人は数分しか生きられないのです。何よりも最も大切なことなのに、誰も其の恩恵に浴している事を忘れて、目先のことばかりにうつつを抜かしているから声を大にして言うのです。

 植林のことを何故しつこく書いたかと云えば、みんなが何気なく吸っている空気、酸素は無尽蔵に有るのではないのです。植物に依って時々刻々と造り出されて居るのです。酸素が無かったら人は数分しか生きられないのです。何よりも最も大切なことなのに、誰も其の恩恵に浴している事を忘れて、目先のことばかりにうつつを抜かしているから声を大にして言うのです。

 お読みいただき真に有り難う御座いました。全編を通して貴方ならどのような判断を為されますか?